AKB48で売上36%アップ、カゴメ『野菜一日これ一本』のPR戦略(2/4 ページ)
今夏、AKB48のメンバーたちが野菜のコスチュームを着て、『野菜一日これ一本』を宣伝した広告を覚えている人も多いのではないだろうか。口コミでの波及も広がった結果、7〜9月の売り上げが前年同期比36%増と大きな効果をあげたPR戦略の裏側をカゴメの鶴田秀朗氏が解説した。
ニコ生で先行露出
鶴田 そんなコンセプトで、2010年に引き続いて2011年も、AKB48を起用した広告キャンペーンを展開することにしました。キーメッセージは「ランチにバランス!」で、ちょっと柔らかい感じですよね。
『野菜一日これ一本』は2010年は25種類の野菜だったので、“AKB48野菜シスターズ”として25人のメンバーを選出して、野菜の格好をしてもらいました。今年は30種類に野菜が増えたので、メンバーも5人増えました。野菜のコスチュームは、コスチュームアーティストのひびのこづえさんにデザインしていただきました。
キャンペーンでは「ランチでバランス!」というキーメッセージのもと、あらゆる媒体に共通アイコンとしてAKB48野菜シスターズを登場させました。
まず、テレビCMより早く、PRイベントの1つとして、ニコニコ動画で仕掛けをしました。AKB48は今や国民的なアイドルですが、コアのファンは「誰よりも早く自分だけが知っている情報を拡散したい」という気持ちがあります。
しかし、テレビCMはみんな等しく見られるために何のニュース性もないので、彼らの注意をひくような情報をニコニコ動画で流したのです。6月28日の「AKB48が生出演で即興CMをアドリブで披露!! カゴメ新キャンペーン発表会(参照リンク)」という30分の生放送で、AKB48のメンバー4人に即興のCMをやってもらいました。来場者数は2万268人で、8000人ほどがタイムシフトで見たということで、ニコニコ動画の人によると「相当多かった」ということです。そして、見た人は見るだけで終わるのではなく、どんどん情報を拡散してくれたので、成果があがったと思います。
そして、AKB48の30人のフィギュアをセットでプレゼントするマストバイキャンペーン※、交通広告、雑誌広告、店頭広告、Webキャンペーンサイト、そしてもちろんテレビ広告も展開しました。
カゴメ 野菜一日これ一本 「AKB48 野菜スライダー」 男性篇 / 15秒 [公式]
この展開で気を付けたことがいくつかあります。
1つ目は、AKB48は2010年の紅白歌合戦に出場して一気にメジャーになったので、今年は多くの企業がキャラクターに起用するだろうと思いました。その中で埋没せずに目立つため、どこにもないオリジナルキャラクターでいこう、つまりAKB48野菜シスターズというのを大事にしていこう、という約束をしてスタートしました。
また、2年目なのでニュース性が薄れるのではないかということで、マス広告開始前のPRイベント(ニコニコ動画のイベントなど)をやったり、Webコンテンツを充実させたりすることで、ネット上での話題化をはかろうと思いました。
『野菜一日これ一本』のキャンペーンサイトでは、AKB48野菜シスターズそれぞれの動画が30種類あるんですね。メンバーがうどんやカレー、牛丼などランチで食べそうなメニューと『野菜一日これ一本』を持ってきて、「一緒に食べよ」というメッセージを送りました。これはかなり早くから拡散していった印象がありました。
また、メインターゲットとなるビジネスパーソンには、テレビをあまり見ない人も多いんです。そこで、通勤時やオフィスでのコンタクトポイントを強化するため、Webサイトやケータイサイトはもちろん、交通広告も普通のキャンペーンより多くの費用をかけて展開しました。
AKB48が『野菜一日これ一本』を飲むデジタルサイネージ(@JR新宿駅西口)
裏話を言うと、AKB48は多忙なので、多くの種類の広告をたった1日ですべて撮り終わらなくてはいけませんでした。30人のメンバーのテレビCM、グラフィック、Webサイト、店頭ツールなどのすべての撮影を、朝から夕方までに終わらせる必要があったのです。撮影スタジオを4部屋くらい借りて、30人を6つのグループに分けて次々に部屋を移動してもらいました。「はい、Aチーム次の部屋へ」といった形で、目が回るような撮影を行いました。
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