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インタビュー

クエやサンマの梅酒も試す!? 発想を広げたことが成長のカギ――中野BC・中野幸治さん(後編)嶋田淑之の「この人に逢いたい!」(6/6 ページ)

梅酒ビジネスにおいて、この5年間で売り上げを25倍にした中野BC。躍進の立役者である同社3代目の中野幸治専務にその経緯を尋ねると、マーケティング部門の改革や先入観を排除した商品開発をしたことがカギとなったのだという。

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社会的な要請に対応

 昨今の社会では、「企業の社会的責任」は企業評価の上で重要な物差しとなっている。食品を扱う企業は、ほかの生き物の命を奪うことで商いをさせてもらっているわけなので、なおさら自社を取り巻く環境とどのように付き合っているかが強く問われることになる。

 「弊社の基本的な考え方は『生き物の命を使い切ること、そして再利用すること』です。具体例を挙げると、梅酒を製造することでアルコール漬けになった梅の実や、梅果汁製造で残った梅の種などは、産業廃棄物にはせず、それを使える企業に売るようにしています。

 あるいは、酒かすを再利用して焼酎を作り、今申し上げた、残り物の梅の種から梅の香りを取り出して、その焼酎に加えて商品にしたりしています。これが実は逸品で、飲むほどに深い味わいがあります。これらは、コストアップ要因にはなりますが、今後とも続けていきます」

 また、近年の食品業界を揺るがす問題として食品偽装問題がある。世間の見る目も厳しくなっている中、中野BCは品質管理についてどのような取り組みを行っているのだろうか?

 「汚染米を日本酒製造に使用した事件も起こり、特にそれ以降、トレーサビリティ※が重視されるようになっています。弊社でも、各部門でトレースしています。梅だけでなく米に関しても、直接、生産農家と取引するようになってきていて、どこの誰がどのようにして生産したものなのかが分かるようになっています」

※トレーサビリティ……物品の流通経路が、生産段階から最終消費段階・廃棄段階まで追跡可能な状態になっていること。

今後の課題は

 絶えざる自社革新を通じて成長を続ける中野BCだが、今後の戦略課題について最後に尋ねてみた。

 「これは和歌山の県民性でもあると思うのですが、どんなに良いものであっても、それを上手に見せたり、プロデュースする力が十分ではないと感じています。小出しにしてしまうと言いますか……、その点は変えていかないといけないと思います」

 3代目の跡取りとして、中野さんは中野BCをどのような会社にしたいと思っているのか?

 「量的な膨張は求めません。今の人員規模で年商50億円くらいを実現していきたいですね(現在は36億円)。自分が和歌山の代表のつもりで、自社製品を通じて、和歌山の良さをより多くの人に知ってほしいです。そこに健康や「おいしい」と言う笑顔が必ずあると確信しています」

 深い郷土愛をベースに躍進を続ける中野BC。今後のさらなる発展を期待したいものである。

嶋田淑之(しまだ ひでゆき)

 1956年福岡県生まれ、東京大学文学部卒。大手電機メーカー、経営コンサルティング会社勤務を経て、現在は自由が丘産能短大・講師、文筆家、戦略経営協会・理事・事務局長。企業の「経営革新」、ビジネスパーソンの「自己革新」を主要なテーマに、戦略経営の視点から、フジサンケイビジネスアイ、毎日コミュニケーションズなどに連載記事を執筆中。

 主要著書として、「Google なぜグーグルは創業6年で世界企業になったのか」「43の図表でわかる戦略経営」「ヤマハ発動機の経営革新」などがある。趣味は、クラシック音楽、美術、スキー、ハワイぶらぶら旅など。

 →Blog:嶋田淑之の“不変と革新”ブログ

 →BackNumber:「この人に逢いたい!」「あなたの隣のプロフェッショナル」


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