アクセス解析ツールの市場動向と展望:アナリストの視点(3/3 ページ)
Google Analyticsを代表とする無償のWebアクセス解析ツールの利用が広まる中、有償ツールの市場はどのように移り変わっていくのか。
市場拡大のための課題
アクセス解析/広告効果測定ツールは、解析を実施するだけの製品であり、得られる結果を具体的なアクションに落とし込まないと効果が得られない。つまり、アクセス解析/広告効果測定ツールは導入しても売上が直接的に拡大する製品ではないため、効果につながるアクションを実施することがツール市場の拡大には欠かせない。
今回当社が実施したアクセス解析利用者に対するアンケートでは、Webサイトの成果を高く評価するほど、アクセス解析業務を重要な取り組みであると認識し、明確な目的を持ってアクセス解析を実施する傾向が強くなっている。
また、Webサイトの成果を高く評価する担当者がいる企業では、専業部署で解析を実施するなどの組織体制が整備されており、有償ツールや有償レポーティングサービスを活用するなど、解析のための投資をおしまない結果が出ている。
有償ツールや有償レポーティングサービスを活用することで、Webサイトの成功につながっているという側面もあろうが、まずはアクセス解析に対する意識の高さと、これによる組織の整備が成功の重要な要因であることは間違いがない。
ツールベンダーは、企業のアクセス解析に対する意識を高めることで、企業における組織の整備を進め、ツールやサービスの売上拡大を目指していく必要があろう。
今回実施したアンケートでは、「ツールを使う時間がない/人がいない」という組織の問題や、「ツールを使いこなせない」という人材面の問題が多く挙げられている。人材面の問題では、具体的なアクションを実施するまでに至っておらず、初歩的なところでつまづいているケースが多い。
ベンダーによる企業アクセス解析担当者の育成支援も重要な取り組みとなるが、ベンダーとしては、まず「分かりやすい」「操作しやすい」ツールを提供していくことが重要であるほか、無償ツールユーザーへのフォローサービスを手掛けるなどにより、中長期的に有償ツールの利用に結び付けていく動きも必要になるはずだ。
調査要綱
市場規模:アクセス解析ツール/広告効果測定ツールベンダー22社への訪問面接取材を中心とし算出。
矢野経済研究所は、1.調査対象:以下の(1)〜(4)の条件に合致する人407名(1.勤務先でWebサイトを開設、2.勤務先がアクセス解析を実施、3.勤務先従業員数11名以上、4.アクセス解析の選定や管理に関与している者or決済に意見できる者or最終決済権者)、2.調査期間:2010年7月16日から2010年7月20日、3.調査方法:提携先Webアンケートモニターに対するWebアンケート調査――によってアクセス解析ツール・広告効果測定ツール市場を調査した。
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