ビジネスチャンスを創出する、これからのWeb戦略とは:Web最適化で勝つ(2/2 ページ)
Webサイトがビジネスチャンスを作り出すメインエンジンになる――。以前から語られてきたが、それを実現できる企業とできない企業の差がはっきりと出るようになった。実現に成功した企業の取り組みを紹介しよう。
使わない手はないソーシャルサービス
Webビジネスの成長に今や不可欠なのが、ソーシャルサービスの活用だろう。ソフトクリエイト EC事業本部 EC営業部第2グループ長の布田茂幸氏は、「Twitterが切り開く! 次世代『ソーシャルEC』実践のコツ 売上・収益200%を目指す!!」と題したセッションで、Twitterでのマーケティングに成功している企業の事例を紹介した。
同社は、1999年にECサイトでPCを販売する事業を立ち上げた。現在はECサイト構築パッケージを販売し、同時に顧客にECサイトを最適化するためのコンサルティングを行っている。
「Twitterについて“知っている”と答える人は多いが、それを“ビジネスに活用している”と答える人はまだ少ない。“早くはじめませんか”というのがわたしのメッセージだ」と話す布田氏は、Twitterのビジネス利用のメリットついて、次の点を挙げた。
- 呼びたいときにECサイトに呼べる
- キャンペーンを短期間&低コストで実施できる
- 口コミが早い&広がりやすい
- 自分から顧客を獲得できる
- サポートの機会がプロモーションの機会になる
企業のTwitter活用は次第に成功事例が出始めている。「MUJI」ブランドでおなじみの無印良品の活用法について、布田氏は次のように話す。
「フォロワー1万5000人達成を記念してセールを計画したが、それをいきなり告知するのではなく、期待を持たせながら事前にツイート(つぶやき)を開始し、“タイムセール なう”とツイートして、6000人が同社のECサイトをクリックした。そして、成約率は10%。すごい数字だ。もちろん、フォロワーも増え、タイムセールなどを開催すれば――つまり顧客を呼びたいとき――ECサイトに呼べる。これがTwitterのメリットだ」
タイムセールの告知といえば、かつては携帯電話のメールが代表的だったが、最近ではその役割をTwitterに担わせるケースが増えている。また、キャンペーンのPRなどにTwitterを利用することも広がっている。利用期間が短くても基本的には無償なTwitterを使うことで、効率的なPRが行える。「現実にはTwitterだけでなく、ECサイトにも1ページだけキャンペーン告知用のページを作成することになる。だが、1ページだけだ。ECサイトで大規模にキャンペーンのPRを展開していたころに比べて、今はとても身軽になった」(布田氏)
Twitterは、基本的に無償で簡単に始められる。そして、うまく運用すれば大きな効果が得られる。最初から大きな効果を狙わなくても、地道に、そして、自社製品に対する質問などのツイートに対応しているだけでもプロモーション効果は高まると布田氏は説く。「丁寧な対応をしていけば、その回答を何万人ものフォロワーが見ているので、ユーザー全体に与えられるプラスのイメージは相当な規模になる」(布田氏)
ECサイトの集客、販売力の強化にTwitterなどのソーシャルサービスが大きく寄与する時代。顧客とのコミュニケーションツールとしてどう生かしていくかが、大きなテーマとなっている。
マネジメント力が必要
最後に特別講演として、キヤノンマーケティングジャパン コミュニケーション本部 ウェブマネジメントセンター所長の増井達巳氏が登壇した。増井氏のセッションのテーマは、「キヤノン流・企業サイトを成功させるWebマネジメントの道筋」というものである。
キヤノンは従来、製造会社であるキヤノンと、販売・マーケティング会社の旧キヤノン販売がそれぞれに企業サイトを構築していた。これを2001年に共通のトップページにしたが、その工程は単に共通ページを作成するということにとどまらない。その後のサイトリニューアルを含めて、サイトマネジメントのルールを確立し、運用していくまでには膨大な作業を強いられたという。
「“Webマスター”という役割が存在すると信じている企業がいるかもしれないが、そんな役割を果たせる人はいない。HTMLが書けて、外部とのコミュニケーションが上手で、コンテンツも作れる……。そんなスーパーマンみたいな人はいないだろう。当社ではコンテンツ、システム、コミュニケーションの3分野でそれぞれに担当者を決め、組織全体で“Webマスター”の役割を果たすようにしている」(増井氏)
Webサイトのマネジメントといっても、その守備範囲は多岐にわたる。Webサイトの設計やロゴの規定、コンテンツ制作の手順といったすべての作業を徹底的にルーティン化していくことが肝心だ。
「制作作業のパターンも決めている。アンケートフォームを作りたいのか、メールニュースを流したいのか、コンテンツを更新したいのか、それによって作業を依頼パターンを決めて徹底させてきた」(増井氏)
こうした統一したルール作りを始めるまでには、個別の部署が決めた個別のルールがあった。それはルーティン化していない手順、つまり、「仕組み化」できていないものだったという。キヤノンではIT部門がWebサイトを管理しているのではなく、各部門が個別に権限を持ち、個別に管理していたのである。
「そのような状態では正確なコスト管理が不可能だ。ある部署では営業販促費、別の部署では宣伝費といったように項目もばらばらで、コストが見えない状況ではWebサイト全体の効果測定などできない」(増井氏)
増井氏は、企業の情報サイトとは「museum」ではなく「library」であるべきだと語る。デザインありきでWebサイトを作っても、管理ができないようでは意味がないということだ。
「デザインじゃない。ルールをしっかり運用するんだという話になると、管理が厳しくて面白みがないWebサイトになってしまうのではないかと心配する声もある。しかし顧客の役に立ち、楽しいWebサイトにするには、しっかりとルーティン化し、運用もマニュアル化し、ガイドラインをしっかりと決めていることが重要だ。軸がしっかりしていないと、変化に対応できないし、工夫する余地も少ない」(増井氏)
増井氏は、10年連続200本安打を達成した米大リーグのイチロー選手を引き合いに出して、次のように話した。
「イチロー選手はルーティンのトレーニングを大切にしているという。ルーティンだからこそ、体調に変化があったらすぐに分かる。Webサイトも同じ。ルーティン化された作業があるからこそ、事故やミスを最小限に食い止めることができる」
Webサイトの最適化、強化に向けたいろいろな方法が存在する。どの方法を選ぶにしても、組織として地道な作業に徹することが成功した企業に共通する要素を言えるだろう。
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