iPadは自社メディアになるか――「情熱の系譜」と効果測定:デジタルPRの仕掛け方(3/3 ページ)
協和発酵キリンは認知度向上を狙い、トリプルメディアを駆使したプロモーションを展開した。中期的な視点で事業戦略とプロモーションを密接につなげ、iPadアプリのリーチ数など各種KPIを設定し、効果を測定している。ここから見えてきた成果、課題、今後の展望を考察する。
効果測定の課題と展望
一方で、効果測定の課題も浮かび上がってきた。各施策のリーチ数という定量的な効果は測定できる反面、ユーザーがどこで認知を形成し、TwitterやiPadアプリの各施策のどこに流れたかという成果の測定には限界があるということだ。定性情報を定量的に把握できれば、トリプルメディアのどの施策で消費者がプロジェクトや社名を認知したかを、より立体的に理解できるようになる。
今後、デジタルPRの効果測定には、消費者がメディア間をどう横断しているかという「ユーザー単位での行動履歴」、ブログやTwitterの投稿内容がほかの消費者の態度をどう変えるかという「ソーシャルストリームの影響力」の把握が欠かせなくなってくるだろう(これらの情報の収集および利用は、プライバシーの観点から一定の配慮が必要になる)。
デジタルで、個別のプロモーションを
情熱の系譜プロジェクトからは、今後の企業プロモーションの在り方が見えてくる。それは、個別の消費者(ユーザー)への真摯(しんし)なアプローチが従来のプロモーションを超える効果をもたらすということだ。そして各々の施策の確からしさを実証するのが効果測定である。
デジタルPRでは、正しい効果測定ができれば、「行動情報」「時間情報」「位置情報」 「属性情報」の4つの軸を基にしたプロモーションが可能になる。消費者の属性やライフスタイルに合わせて最適な戦略を立てることも可能だ。デジタルPRの最大の価値とも言い換えられる。
企業と消費者のコミュニケーションは、デジタルを介してより密接かつ強固につながっていくのである。
著者プロフィール:野崎耕司(のざき こうじ)
ビルコム タッチパッド端末事業部ディレクター。宮城大学大学院事業構想研究科卒。2006年1月ビルコムに入社し、コンサルティング、不動産、Webサービス、出版などの業界でB2B、B2Cを対象としたPRコンサルティングを経験。2009年1月よりブランディング、マーケティング活動に従事。デジタルツールを駆使したマーケティングプランニングに精通しており、共著に『Twitterマーケティング』(インプレスジャパン)がある。2010年6月よりタッチパッド端末事業部ディレクターに就任し、「iPadブランドマガジン」をはじめとするタッチパッド端末事業の商品開発から営業/制作までを一貫して統括している。
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