iPadは自社メディアになるか――「情熱の系譜」と効果測定:デジタルPRの仕掛け方(1/3 ページ)
協和発酵キリンは認知度向上を狙い、トリプルメディアを駆使したプロモーションを展開した。中期的な視点で事業戦略とプロモーションを密接につなげ、iPadアプリのリーチ数など各種KPIを設定し、効果を測定している。ここから見えてきた成果、課題、今後の展望を考察する。
連載の第3回目「トリプルメディアを駆使、『情熱の系譜』」舞台裏」では、トリプルメディアの特性を生かしたデジタルPRの事例として、協和発酵キリンの「情熱の系譜」プロジェクトを紹介した。これはテレビ番組(マスメディア)、TwitterやYouTube(ソーシャルメディア)、iPad(自社メディア)というトリプルメディアを活用して、同社のメッセージを届け、社名などの認知度向上を狙う取り組みである。ではトリプルメディア活用は企業のプロモーションに有効なのか。今回は同プロジェクトから見えてきた効果や課題、今後の展望を考察したい。
プロモーション戦略に必要な「中長期的な視点」
情熱の系譜プロジェクトは、協和発酵キリンの「ブランド構築3カ年計画」に沿って進行している。この計画の土台にあるのは、ブランド・エクイティ研究の第一人者であるケビン・レーン・ケラー教授の「ブランド構築ステップ」というフレームワークだ。
ブランド構築ステップ
企業ブランドを確立するステップを4段階に区切ったもので、ブランドを顧客に「認知してもらう段階」「理解してもらう段階」「ブランドイメージを浸透させる段階」を経て、最終的に顧客との「結び付きを強める段階」を目指すという理論。
ブランド構築3カ年計画は、ビルコムがこのフレームワークを基に提案したものだ。協和発酵キリンの場合、1年目は「社名認知」と「業態認知」を注力事項とし、「協和発酵キリンという会社を聞いたことがある」「協和発酵キリンは製薬会社だ」と顧客に認知してもらうことを目指した。2社の合併により2008年に発足した同社の優先課題は、基礎から企業ブランドを構築していくことだったからだ。
2年目には“製薬会社の中でも抗体医薬に強い”という「機能認知」、“協和発酵キリンは誠実そう”という「イメージ浸透」に注力するフェーズと位置付け、3年目に“協和発酵キリンはいい会社”という「ロイヤリティ獲得」を目指すことにした。
協和発酵キリンは、これらのステップを基にトリプルメディアを駆使したデジタルPR(デジタル領域に精通したプロモーション手法)を展開している。デジタルPRでは、1年ごとに場当たりな施策を立てるのではなく、企業の中長期的な事業戦略からマーケティング/コミュニケーション戦略を導き出すことが重要だ。
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