「継続的に購買を繰り返す」顧客を増やすために何ができるか:【連載】フルファネルで考える広告運用 最終回(1/2 ページ)
未知のユーザーを見込み客へ、見込み客を顧客へ、そして顧客を優良顧客へ。最終回はフルファネルマーケティングの仕上げとなる「拡大」のステージ、そしてB2Bでの考え方について説明します。
前回までの記事では、広告キャンペーンの最適化を図り、新規顧客の興味を引き付け、購入意欲を高めるまでの道のりについてお伝えしました。最終回となる今回紹介するのは、最も難易度の高いファネル底部の「拡大:Grow」のステージです。このステージでは、顧客をブランドのファンに育成し、好循環のサイクルへとつなげることを目指します。
客単価を伸ばす:ある焙煎コーヒー豆販売の事例から
マーケターの最終的なミッションは売り上げに貢献すること、つまり「客数」×「客単価」を上げることといえます。「拡大:GLOW」はこのうち、客単価を伸ばすことに注力するステージです。
既存顧客を囲い込み、維持していくために効果的な施策としては、「リターゲティング」「アップセル」「クロスセル」などの手法があります。ここでは、焙煎コーヒー豆を販売しているある企業が、新規顧客獲得のためにコーヒー豆を訴求する広告キャンペーンを実施したという想定で、具体的な考え方を見ていきたいと思います。
半年間のキャンペーン終了後、3日以内にWebサイトを訪問したユーザーは1563人でした。「期間限定 試飲コーヒー豆」を購入した顧客は86人。これらのデータを活用して、再アプローチしたいと考えます。
広告キャンペーン期間とその直後には、広告のクリック数以上にサイト訪問数が上昇することがあります。これは、クリックはしないまでも広告を見たことでWebサイトを訪れるユーザーの存在を示しています。
そのようなユーザーには「リターゲティング」が効果的です。1563人の新規訪問ユーザーは、焙煎コーヒー豆販売サイトを訪れて離脱した後、しばらくの間は興味関心を持って購入を検討している可能性があると考えられます。そこで、これらのユーザーが次に訪問した別のWebサイトにおいて「焙煎コーヒー豆割り引きセール」と「期間限定 試飲コーヒー豆」の広告を見せ、再訪問を促します。
「期間限定 試飲コーヒー豆」を購入して顧客となっているユーザーに対しては、リターゲティングと同時にメールでのアプローチを仕掛けます。既にブランドを信頼し、購買行動を起こした実績のある顧客は、同ブランドの別製品を売る視点で見れば、購入する可能性が最も高い見込み客でもあります。そこで、CRMと連携して顧客の行動特性や購買履歴に合わせてメッセージ内容を設定し、アップセルやクロスセルを促します。
これらキャンペーンの効果を測定し、広告を最適化するためのKPI(評価指標)は次の5つです。
- ビュースルーコンバージョン(View through conversions:VTC):広告を(クリックはせずとも)見たこと(View)によって獲得したコンバージョン数
- リターゲティングデータの蓄積貢献度(Lift on retargeting):キャンペーン開始後に増加したデータプール(訪問顧客数情報の蓄積)
- CPA(Cost per acquisition):キャンペーン全体に掛かった費用を合計コンバージョン数で割った数値
- ROI(Return on investment):キャンペーンで発生した収益の総額を総費用で割った数値=費用対効果
- LTV(Lifetime Value):1人の顧客が生涯でそのWebサイトに費やす純利益=顧客生涯価値
中でも基本的なLTVの算出方法について、詳しく見ていきましょう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- マーケティングと営業の溝を埋めるため「本物のABM」の話をしよう――庭山一郎
新刊『究極のBtoBマーケティング ABM(アカウントベースドマーケティング)』を上梓した庭山一郎氏。B2B企業のマーケターに伝えたいABMの本質とは? - そのKPIは本当にKPIなのか? 数字に振り回されないための基本的な考え方
そもそもKPIはどのような考え方で設計すべきでしょうか。成果を出すためのツールとして使いこなせるように、まずは基本を押さえておきましょう。 - B2BとB2Cでマーケティングはどう違うのか? ABMの伝道師に素朴な疑問をぶつけてみた――中東孝夫氏
アカウントベースドマーケティング(ABM)が注目されている。日本においてそれをいち早く実践し、成果を上げてきたエキスパートに話を聞いた。 - PDCAを評価するための基準「KPI」をどう決める?──ビジネス種別の事例を知る
より原点に近いところからPDCAの考え方を深める本連載。今回は、戦略評価のための「KPI」の定め方について、ビジネス別、Webサイトの種別に整理します。