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石黒 不二代氏が語るオムニチャネルの本質、“個”客中心主義とは何か「Web & デジタル マーケティング EXPO 春」リポート(1/2 ページ)

セブン&アイ・ホールディングスの一大プロジェクト「omni7」を構想から開発まで支援したネットイヤーグループ代表取締役社長 兼 CEOの石黒 不二代氏の講演から、オムニチャネル時代の企業戦略について学ぶ。

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石黒氏
石黒 不二代(いしぐろ・ふじよ)
名古屋大学経済学部卒業。米スタンフォード大学MBA取得。ブラザー工業にて海外向けマーケティング、スワロフスキー・ジャパンにて新規事業担当のマネージャーを務めた後、シリコンバレーでハイテク系コンサルティング会社を設立。Yahoo!やNetscape、Sony、 Panasonicなどを顧客とし、日米間のアライアンスや技術移転などに従事。1999年にネットイヤーグループのMBOに参画し、2000年より現職。

 オムニチャネルという言葉を耳にするようになって久しいが、現時点でその本質を的確に捉えられているマーケターは、まだ数多くないのではないか。また、オムニチャネルが限られたごく一部の企業だけのものであると、誤解している人もいることだろう。

 オムニチャネルとは結局何を意味するのか。O2Oと何が違うのか。

 本稿では、2016年5月12日に開催された「第10回 Web & デジタル マーケティング EXPO 春」の基調講演の中から、「“個”客中心主義への変革が求められるオムニチャネルの実現」と題したネットイヤーグループ代表取締役社長 兼 CEO 石黒 不二代氏の講演を紹介する。

 チャネルを統合したマーケティングの先に、どんな世界が広がるのか。オムニチャネルの本質とオムニチャネル時代の企業の在り方について、学んでいきたい。

求められる“個”客中心主義

 スマートフォンやタブレットの普及により、企業とユーザーの接点は増大した。今日のユーザー行動はとても複雑であり、あらゆる購買行動プロセスにおいて、複数のチャネルを渡り歩く。「オムニチャネルとは、デジタルをフルに活用した成長戦略のこと。お客さまがどんな興味・関心を持っているかを常に意識しながら、徹底した“個”客中心主義でサービスを構成することが求められている」と石黒氏は説く。

 実際、ユーザーのデジタルメディアへの接触時間は大きく増加している。2015年のメディア総接触時間を比較(※)すると、デジタルメディアは4大マスメディアに拮抗(きっこう)するまでになっている。特に10代から30代のユーザーでは既にデジタルの方が多い。

※博報堂DYメディアパートナーズ 「メディア定点調査2015」より。

 この流れは「モノ消費からコト消費へ」という消費傾向の変化にも通じていると石黒氏は語る。商品そのものだけではなく、「プッシュ通知で新作アイテムの情報を知り、アプリで購入する」「他の購入ユーザーやショップ店員のコーディネート例を参考にしながら、商品の購入を検討する」といった購入前、中、後における“体験”および“ストーリー”が求められているのだ。

 「ユーザーは、メディア・広告・コーポレートサイト・EC・店舗・コールセンターなど、あらゆる接点において自分のためにキュレーションされた情報を求めている。お客さまを知り、一人一人に合わせたコンテンツをマルチチャネルで提供することで、モノとストーリーの組み合わせで接客をしながら、クロスセル・アップセルを図っていく必要がある」(石黒氏)

オムニチャネル時代の顧客ニーズ

 オムニチャネルの推進には、マーケティング部門のみならず、全社的な取り組みが不可欠だ。ユーザーに多様な選択肢が与えられている今、基準となるのは「どのような体験ストーリーを提供してくれるか」「サービス自体が便利なのか」という2つのポイントだ。

 昨今はリアルだけでなくデジタルの世界でも、“なじみの店”が固定化しているユーザーが増えている。ネットで買えるのは今や当たり前。 なじみの店になる、つまりユーザーのリピート購入を促すためには、いかに気持ち良く買えるかが重要になってくるのだ。

 現在、Amazonがリアル店舗を作り始めていることが話題になっているが、これも、そうした試みの1つだ。体験の場、検討の場を求めるユーザーに、リアル店舗という形で機会を提供しようとしているのだ。Amazonにとっては、オンラインであることより、なじみの店としてユーザーに選んでもらうことが重要というわけだ。出発がリアル店舗なのかオンラインストアであるかにかかわらず、なじみの店として選ばれ続けるためには、ユーザーがよりうれしくなるようなサービス面でのエコシステムを作っていかなければならないのである。

 では逆に顧客にとってストレスになるのは、どんなときだろうか。石黒氏は7つの例を挙げた。

  • 企業視点のトレンドしか見えない
  • 身近な人の評判が分からない
  • 余計な営業を受ける
  • 店舗では24時間買えない
  • 特定のブランドしか買えない
  • Webで買った方が安い
  • 送料・返品有料、ポイントが使えない

 つまり、ユーザーにとってのオムニチャネルとは、チャネルを意識せずに、自由に購買行動を取れることなのだ。

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