#4 数字が大事:【連載】マーケティング7つの法則
「数字」という切り口でマーケティングを考える。なぜマーケティングには数字が重要なのか。マーケティングとは、最終成果(売り上げ)を導くためのさまざまなプロセスのことであり、常に細かな進捗確認(=効果計測)が求められるからだ。
ビジネスとマーケティングは数字で管理しないと始まらない
マーケティングでは数字が大事です。当たり前の話ですが、企業が今どのような状態にあるか、本四半期は前より良くなっているかどうかを知るためには数字で測るしかありません。マーケティングにはブランディングやポジショニング、マインドシェアなど数字では測りにくい項目も多く存在しますが、勘の裏付けであってもなんとか数字にしたいところです。数字があれば、プラン、実行、確認のプロセスから改善のループを回すことが可能になるからです。
なぜマーケティングにおける数字の重要さを強調するのか? それはマーケティングが、営業や販売を通して売り上げや利益といった最終成果を出す「中間プロセス」だからです。
営業は売ってなんぼ、です。営業部を評価する場合、売り上げのためのリード管理や行動プロセスをチェックすることもありますが、適切なプロセスを実施していれば成果が出るはずなので、効果測定の苦労はありません。野球の打率、サッカーの得点数のように目に見える最終成果を出すのが営業です。
一方、マーケティングは活動のパフォーマンスを他の過程に渡す成果や、調査などで分かる定性情報で測る必要があります。例えばBtoBマーケティングだと以下のような指標です。
•コンタクト(連絡先)獲得数
•ロー(生)リード獲得数
•クオリファイド(確認済み)リード獲得数
•パートナーの案件生成数
成果を測る重要指標の名前としてKPI(キーパフォーマンスインジケーター)という呼び方がありますが、マーケティングに携わる人は「どのKPIで数字を稼ぐことがミッションなのか」を意識しましょう。また、KPIの数字が厳しいなら改善プランを提案して、チームや会社により貢献できるKPIを設定させてもらうのもマーケターとして取り組むべきポイントです。「Facebookのいいね! 数」など、それを稼ぐと何が良くなるのかあいまいな指標もありますが、それが本当にKPIなのか検証して、ダメなら変えればいいのです。
マーケティングキャンペーンやスローガン作成にも役立つ「数字」
マーケターにとってはキャンペーンのフレーズやスローガン作成にも数字は役立ちます。数字は、リアリティを出すために有用です。ただ、後に変化する可能性の高い数字をキャンペーンに織り込むのは副作用が大きいので避けた方がいいでしょう。例えばドラッグストアの「薬ヒグチ」がかつて掲げた「1327店」という拡大目標は、社会状況が変わってしまった今も残っています。牛丼の「吉野家」のケースでは「牛丼一筋80年」 という歌が人々の頭に刷り込まれてしまいました(実際は1899年創業で2012年の時点で113年のようです)。
タグライン(ブランドを表す主たるキャッチコピー)のように人の心に刷り込むことが目的の項目に数字を入れるのはお勧めしません。私がサイトオープン時のメンバーとして関わった「専門家(ガイド)による情報提供メディア」All About Japanもメディアの強さを示すためにガイドの数をリアルに表示させたいという意見が強くありました。具体的な数字をタグラインではなく他の説明文の中で使うべきなのではないか、とか概数を記載するほうがいい、という議論をしたことを覚えています。今All About Japanを見ると目立たない部分にガイド数の表記があり、妥当なところに収まった感じです。タグラインは、「その道のプロがあなたをガイド」という本質的な特長を表し、マインドへの刷り込みに数字は入っていません。
数字で伝えると便利なのは、伝えたい事象に複数のポイントがある場合です。数字でポイントの数を伝えれば記憶しやすく、リアリティを出すことがでます。原則やスローガンをまとめる際、たくさんポイントがある時は、私が参考にしている、アル・ライズ、ジャック・トラウトの共著「マーケティング22の法則」のように大きな数字を使うのも手です。ただ、個々のポイントをより深く伝えたい時はなるべく数を絞るのがお勧めです。
伝えたいポイントが1つの場合は、数字を出さずに信条や、スローガンとして見せられます。「“We Try Harder”」はアメリカ2番手のレンタカー会社Avisの伝説のスローガンです。ポイントが2つの場合、 「&」でつなげてしまうこともできます。「祈り、働け」など、非常に多いパターンです。3つなら、「三大原則」など、網羅性を感じさせることができます。以下、4、5、6の数字も使えなくはないのですが、記憶しやすいのは3までなので「3つのポイント」にそぎ落とすのがお勧めです。しかし、なかなか数を絞るのが難しい場合でも7つまでなら収まりが良いと思います。ちなみにこの連載も「マーケティング7つの法則」です。この連載が終わったとき、みなさんの頭には「7つの法則」がしっかりと残っていると信じています。
※この記事はITmedia オルタナティブブログ「坂本英樹の繋いで稼ぐBtoBマーケティング」の原稿を一部修正したものです。
寄稿者プロフィール
坂本英樹(さかもとひでき) 基盤系の外資ソフトウェア会社でネットマーケティングを担当。リード獲得の実務と裏方に日々奮闘中。案件を営業に「繋ぐ」、売り上げに結び付けて「稼ぐ」という意識(日本のマーケティングではまだまだ足りない)や活動を普及させ、さらにはマーケティングで「測れて報われる」ことを目指している。
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