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セールスイネーブルメントが営業組織をこう変えた――セールスフォース・ドットコムとNTT Comの場合ハイパフォーマーの成果から組織全体のノウハウを(1/2 ページ)

営業の人材育成においてセールスイネーブルメントの考え方が注目されている。セールスイネーブルメントとは何か、どのような成果が期待できるのか。第一人者がその考え方と先進事例を紹介した。

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 セールスイネーブルメント(以下、イネーブルメント)とは、成果を起点とした営業人材の育成の仕組みを指す。欧米を中心とする海外では10年以上前から注目されており、導入企業はもちろん、導入や運用の支援を行う専門家も増えつつある。一方、日本ではまだまだ注目され始めたばかりだが、今後さまざまな企業で広がっていくと予想される。

 2019年12月にこれをテーマとしたビジネス書『世界最先端の営業組織の作り方 セールス・イネーブルメント』(かんき出版)を上梓した山下貴宏氏は、日本で初めてイネーブルメントに特化した企業R-Square & Companyを創業し、代表取締役社長を務める。山下氏は前職のセールスフォース・ドットコムにおいて、日本や韓国の営業部門全体の人材開発施策を行ってきた実績を持つ。

 本稿では、R-Square & Companyが2019年1月29日に開催した同書の出版記念セミナーから、実際にイネーブルメントに取り組むセールスフォース・ドットコムおよびNTTコミュニケーションズの2社を交えて行われたパネルディスカッションのハイライトを紹介する。


そもそもSFAを日常的に活用できていなければイネーブルメントは始まらない

 従来の育成プログラムはトレーニングを中心とするものが多いが、イネーブルメントの特徴は、成果を起点としているところだ。まず目標とする成果を明確にし、それを達成するために必要な行動、行動に必要な知識やスキルを分析して体系化するのである。

 「イネーブルメントのコンテンツの大本は現場。特に、ハイパフォーマーが何をしているのかをデータから分析し、ノウハウを吸い上げて現場に戻す。その後、そのノウハウが実際に成果につながっているのかどうかも見られる環境を整えてトラッキングし、PDCAを回します。起点が営業現場にあるので、極めて実践的な内容のプログラムを行うことができるのです」と山下氏は説明する。


R-Square & Company代表取締役社長の山下貴宏氏

 実際の営業現場の活動データが起点となるということは、データを取得するためには、SFA(営業支援システム)の日常的な運用が欠かせない。しかし、そもそもSFAを導入しても活用自体が進まないという悩みを抱える企業も多い。まずこの最初の難関をどう突破したらいいのか。NTTコミュニケーションズの徳田泰幸氏(第二営業本部 Senior Manager)は、SFAの活用を組織に浸透させるために自社で行った工夫をこう語る。

 「一つは、強制と褒め。SFAに入っているデータ以外は一切認めないとする一方で、データを入れてくれた人に対しては、役員や組織長が自ら“いいね”やコメントをするようにしました。もう一つ、SEなどの支援部隊をアサインするプロセス自体をSFAに入れ込み、データを入力しなければ次のステップに進めないようにしたことも、活用の浸透に大きく貢献しました」(徳田氏)


NTTコミュニケーションズの徳田泰幸氏

 SFAを社内に浸透させる大前提として「経営層の方々が、SFAを使うメリットを正しく理解することが大事」と語るのは、山下氏の跡を継いでセールスフォース・ドットコムでイネーブルメントを推進する安田大佑氏(執行役員Sales Enablement/営業人材開発部本部長)だ。

 「SFAをうまく使えば、いつ、誰に、何を、どんな言い方で営業すれば、お客さまとの接点の効果を最大化できるかが分析できる。数字にインパクトがあると分かれば、経営層もSFAに対する見方が変わります」(安田氏)


セールスフォース・ドットコムの安田大佑氏
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