日本マクドナルド 足立 光氏が語る、成功するデジタルマーケティングへの3つのポイント:「Adobe Symposium 2017」レポート(1/2 ページ)
「Adobe Symposium 2017」より、日本マクドナルド 上席執行役員 マーケティング本部長 足立 光氏の講演の概要をお伝えする。【訂正】
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「Adobe Symposium 2017」の基調講演で最後に壇上に立った日本マクドナルド 上席執行役員 マーケティング本部長の足立 光氏は、同社のマーケティングにおけるデジタル活用について語った。
プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(P&G Japan)を皮切りに事業会社と戦略コンサルティングファームでキャリアを積んできた足立氏が入社した2015年、日本マクドナルドは逆風の中にあった。2014年の賞味期限切れ鶏肉問題や2015年の異物混入問題などのスキャンダルもあって売り上げと利益が共に低迷し、赤字が続いていたのだ。当時、同社に対するメディアの論調は冷ややかで、SNS空間にもネガティブな声が充満していた。
しかし2016年以降、日本マクドナルドは業績を回復し、2017年第1四半期決算では前年実績から大幅増益を発表している(関連記事:「好調マクドナルド、通期業績見通しを上方修正」)。この復活の重要な鍵となったのが、デジタルマーケティングを活用した顧客体験の提供だ。
逆風の中で決断したコミュニケーション戦略の大転換
「マクドナルド」は直営店とフランチャイズ合わせて全国に2900の店舗を持ち、年間13億人が来店するナショナルブランドである。従来、プロモーションの予算はほとんどテレビCMに割り当てられていた。
しかし、若者のテレビ離れが進みマス広告の影響力は低下しつつある。そこに度重なる不祥事が直撃した。信用を失ったマクドナルドのマーケティングメッセージに耳を貸す人はいなくなってしまった。また、そもそも赤字が続いていたので、テレビCMを十分に打てるだけの予算もなかった。
ピンチのさなか、マーケティング責任者となった足立氏は1つの決断を下した。マス広告だけでなくメディア(PR)とファンの声(SNS)を最大限に活用するように、コミュニケーション戦略を大きく転換したのだ。
「ハンバーガーは食べなくても死なない。食べてもらうには理由が必要だ。メディア露出で“世間ごと化”すればニュースになる。それが食べる理由になる。また、友達が食べて『おいしかった』という声をSNSで発信すれば“身内ごと化”する。それも食べに行く理由になる」(足立氏)
メディアに注目され、SNSでネタにしてもらうために欠かせないのがデジタル施策だ。マクドナルドにおいて、媒体費に占めるデジタルの割合は2013年にはわずか2%にすぎなかった。しかし、足立氏が入社した2015年には15%に。2016年からは動画を積極的に使い始めた。現在では総額の2割くらいをデジタルが占めているという。
具体的には、例えばマクドナルド公式モバイルアプリのダウンロード数は3700万。月間アクティブユーザー数(MAU)は1400万人だ。Webサイトは月間6000万PV。Twitterのフォロワーは150万人を数える。これは食品関連で4位だが、「いいね!」やコメント、リツイートなどエンゲージメント数は他の追随を許さないという。
【訂正:2017年10月5日20時45分 初出で「Webサイトは1日600万PV」となっていましたが「月間6000万PV」に訂正しました】
マクドナルドにおける顧客体験には、新商品などを知る体験と店舗での体験と両方がある。故に、NTTドコモの「dポイント」や楽天の「楽天スーパーポイント」といったポイントプログラムとの提携、店舗Wi-Fi、タッチパネルで注文が可能なセルフオーダーキオスク、デジタルメニューボード、さらに、子どもの遊び場であるデジタルプレイランドなどもデジタル施策の範ちゅうにあると足立氏は言う。それぞれの顧客体験を向上するために、あらゆる場面でデジタルが活用されているのだ。
デジタルマーケティングを成功するためのポイントとして足立氏が挙げるのが、以下の3つだ。
- 「デジタル」という言葉を使わない
- 「デジタルだけ」を考えない
- 明確なKPI設計
順に見ていこう。
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