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丸井×アダストリア:デジタルで再定義されるファッションビジネスを語る「Adobe Symposium 2017」レポート(1/2 ページ)

デジタルで変わるファッション業界のビジネスについて、「Adobe Symposium 2017」におけるパネルディスカッションの内容をダイジェストで紹介する。

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 本稿では、「Adobe Symposium 2017」におけるパネルディスカッション「デジタルは日本のファッション業界を変えるのか?」の模様をお届けする。登壇者は丸井 オムニチャネル事業本部 部長 臼井 毅氏とアダストリア 執行役員 マーケティング本部長 久保田 夏彦氏。聞き手はアドビ システムズ シニアセールスビジネスディベロップメント マネージャー 熊村剛輔氏が務めた。


左から、丸井の臼井氏、アダトリアの久保田氏、アドビシステムズの熊村氏

デジタルを起点としたブランド体験もある

 熊村氏は、アドビシステムズが6月に実施した国内消費者動向調査「Adobe Digital Survey 2017」の結果から、ブランドを初めて知った顧客接点が何かを紹介した。洋服の場合、回答内訳は店頭が50%、WebやSNSが26%であったという。また、情報収集の手段や、比較検討時に影響を情報源として、年代を問わずデジタルのWebやSNSが高い割合を占める傾向が進展しているという。

 この結果を受けて臼井氏は、「店頭が50%というのは違和感がある」と感想を述べた。といっても、「少ない」という意味ではない。むしろ、その逆だ。実は以前、丸井でも同様の調査を実施した後にフォーカスインタビューで詳細に話を聞いたところ、店舗に行く手前で少しだけWebやSNSなどで接点を持っていた場合でも「店舗が最初」と回答している場合があったというのだ。

 久保田氏もそれを受け、店舗で実際に商品を見るとその前の接触を忘れることもあると指摘した。「実際はSNSでの接触が最初で、ブランドのアカウントをフォローし、投稿を見た上で店舗に来るという流れがある」(久保田氏)。

 ショッピングモールのフロア配置では、同じセグメントのブランドが店舗を隣り合わせていることが多い。店舗で自社のブランドを消費者に強く印象付けるには、ブランドの差別化が重要になる。実店舗だけでなく、あらゆる接点でコミュニケーションを強化していく必要があるのは言うまでもない。とりわけデジタルは重要だ。実際、消費者とのデジタル接点が多い企業ほどブランドの信頼度が高いことは、先述のアドビの調査結果からも明らかになっているという。

雑誌になくてWebにあるもの

 ファッションにおけるブランド認知度の向上という点では、かつては雑誌の果たす役割が圧倒的に大きかった。しかし、雑誌は幅広い層にリーチするには効果的だが、一方的に情報を押し付けられていると感じる消費者もいる。だが、紙幅の制限がなく双方向のやりとりも可能なデジタル環境では、コミュニケーションの在り方も違ってくる。

 アダストリアが運営するECサイトの[.st](ドットエスティ)では、商品写真とは別に、全国約1200店舗のスタッフが、自分をモデルにスタイリングした写真を毎日投稿している。サイト会員が自分のスタイリング写真を投稿することもできる。「お客さまの行動を見ていると、デジタルシフトを進めていかざるを得ない」と久保田氏は述べた。

 その一方で久保田氏は、「ブランドへの信頼度という意味では、ECサイトだけのブランドと店舗も運営しているブランドを比べれば、店舗のあるブランドの方が店員の接客がある分、信頼度が高くなるはずだ」と語る。

 ここで重要なのはリアルとデジタル、どちらの接点を持っていることだ。店舗だけあれば十分ということではない。実際、店舗に出向いても、色やサイズの問題で商品を確実に買えないということはよくあるものだ。臼井氏は、丸井のECサイトで店舗在庫の情報を頻繁にチェックする人にその理由を尋ねたところ「絶対ではないが、本当に欲しいときに在庫がない店舗には足が向かないかもしれない」と言われたことを明かした。買い物には、いいものを見つけて買いたいというニーズもあれば、欲しいものを確実に買いたいというニーズもある。この両方を満たすことがブランドへの信頼につながる。店舗だけでは後者のニーズを取りこぼしてしまうかもしれない。

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