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なぜユーザーの心が動かないか? 御社のコンテンツに足りない3つの要素【連載】コンテンツマーケティングの“HARD THINGS”に立ち向かう 第1回(1/2 ページ)

コンテンツマーケティングを始めてはみたものの期待していたほど結果が出ない。そもそも正しい方向に向かっているのかもよく分からない。答えの出ない難問に悩めるWeb担当者に対処法を示します。

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上司からのHARD THINGSなツッコミと担当者の苦悩

 潜在客・見込み客を集め、企業とその商品・サービスへの興味を喚起し、顧客となった後も長期的なつながりを維持するため、コンテンツマーケティングに取り組む企業が増えている。しかし、いざ始めてみると……。

 シリコンバレーの有名ベンチャーキャピタリストであるベン・ホロウィッツが「HARD THINGS」(※)と呼ぶ、解決しなくてはならないけど正解が見えない難問。コンテンツマーケティングという社内に前例の少ない取り組みに挑むに当たっては、何度となくHARD THINGSに行く手を阻まれる経験をすることだろう。

 本連載は、そんな苦境に立つWeb担当者のための、HARD THINGS解決マニュアルである。

※コンテンツマーケティングに限らず、目の前に立ちはだかるビジネス課題に悩める人はベン・ホロウィッツ「HARD THINGS 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか」(日経BP社)を一読することをお勧めする。

HARD THINGSその1:「数が勝負」のコンテンツ、反応はいまひとつで……

 スティーブ・ジョブズが残したといわれる名言の1つに、こんな言葉がある。

美しい女性を口説こうと思ったとき、ライバルの男がバラの花を10本贈ったら、キミは15本贈るだろうか?

そう思った時点でキミの負けだ。

ライバルが何をするかは関係ない。

その女性が本当に何を望んでいるのかを、見極めることが重要なのだ。

(出典:桑原晃弥『スティーブ・ジョブズ名語録 人生に革命を起こす96の言葉』PHP文庫)

 コンテンツマーケティングを成功に導くために「記事の量産」を図ることは、検索流入やアクセス数増加の策として、間違ってはいない。しかし、数を増やすこと自体が目的となり、質の低いコンテンツが増えているとするならば、本末転倒だ。

 例えばクラウドソーシングなどに丸投げして、記事1本(1000字)を3000円で発注し、毎月60本更新していたとしよう。こういうケースでは価値の低いコンテンツを量産している可能性が高い。外注している記事が本当に価値のあるコンテンツになっているか、その中身を検証してみる必要があるだろう。

コンテンツの価値は3つの要素で決まる

 そもそも、価値あるコンテンツとは何か? まず大前提となるのが、ユーザーが求めているコンテンツであるかどうかである。どんなに内容が濃くて上手な文章でも、ユーザーの求めていない記事では意味がない。

 ユーザーの心を動かす、価値あるコンテンツには「広さ」と「深さ」と「驚き」の3つの要素が欠かせない。

「広さ」

 まず「広さ」。つまり、広く誰にでも理解できる、普遍的で分かりやすいコンテンツであることが重要だ。

 例えば福井県を拠点とする三和メッキ工業という会社がある。『Web Designing』 2015年11月号(マイナビBooks)によれば、同社のサイトは現在、月間15万PV。毎日ほぼ10件程度の問い合わせがあるという。Webサイトを立ち上げたのは2004年。コンテンツマーケティングという言葉がようやく日本に浸透し始めた現在から数えて12年も前のことである。当時、価格競争に巻き込まれた同社の苦しい経営状況を打破するためにWeb施策を考えたのだそうだ。

 同社が最初に手掛けたコンテンツは「めっきQ&A」。メッキに関して寄せられるよくある質問に、同社のエキスパートが分かりやすく回答するという、シンプルなコンテンツだ。最小限の労力で、かつ自社が持つノウハウをユーザーに最も役に立つ形で提供できるということで始まったものだが、今ではこのコンテンツだけで常時約6000もの記事がある。情報量では競合他社を圧倒し、これをきっかけに舞い込んでくる仕事も数多い。全てを受け切れないほどの盛況ぶりだという。10年以上の歳月をかけて蓄積したコンテンツが、会社経営に勢いをもたらしたのだ。

 メッキという特殊な専門分野のニーズであるが、それを一般の人にも分かりやすくかみ砕いて、知識を幅広く展開することで、ユーザーが抱える課題や悩みに応える「課題解決型コンテンツ」になっているのだ。

 しかし、既にお気付きの人もいるだろうが、三和メッキ工業のコンテンツは、広さだけが特徴というわけではない。これがWeb上を漁ってコピペするだけの2次情報ばかりだったなら、大した価値は生まれなかっただろう。Web担当者が広さを重視して毎月60本の記事を更新するのは間違いではない。とはいえ、ニーズに沿わない1本数千円の薄っぺらい記事を大量生産してもほとんど意味はない。三和メッキ工業の例に学ぶのであれば、広さと併せて専門性に裏打ちされた「深さ」が必要になってくることに留意すべきだ。

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