Passbook、うちの店ではこう使う――導入店舗に聞く活用法:Apple注目の新サービス
iOS 6の新機能、Passbookに対応するという企業が次々と登場している。これらの企業は、Passbookのどこに魅力を感じ、どんなふうに使っていこうとしているのか。木村屋總本店とGapの担当者に聞いた。
電子化したクーポンやチケット、搭乗券、ショップカードをiOS端末の中でまとめて管理でき、必要なときにすぐ使える――。こんなことを可能にするのが、Appleの最新OS「iOS 6」に搭載された新機能、Passbookだ。
中でもクーポンサービスは、対応ソリューションが早くから登場したこともあって、iPhone 5の発売と同時に提供を開始する企業も見受けられた。PassbookはiPhone 5のユーザーなら、アプリをインストールすることなく利用でき、クーポンは配布用URLをクリックして追加ボタンを押すだけでPassbookアプリに格納される。今後のユーザー基盤の広がりと、使いやすさ、情報拡散力の高さを考えると、店舗がすぐ使ってみたいと思うのも当然だ。
いち早くサービスを開始した企業は、Passbookのどこに魅力を感じ、自社のマーケティングにどのように活用しようとしているのか。老舗のパン屋として知られる木村屋總本店、ファッションブランド大手GAPのマーケティング担当者に聞いた。
若い世代の木村屋ファンを増やしたい――木村屋總本店
銀座の目抜き通りに店を構える老舗パン屋の木村屋總本店。iPhone 5の発売日には店頭にプレゼント用のパンを並べ、Passbookのクーポンを持ってきた人に配布した。袋の中にはリンゴクリームパンと「酒種あんぱん物語」という小冊子が入っており、パンを食べながら木村屋名物のパンの歴史を楽しめるようになっていた。
「Passbookは、これからのお客様にアプローチする手段として最適」――。こう話すのは、銀座 木村屋 製販課で副課長を務める愛甲武之氏だ。木村屋のメインの客層は、スマートフォンを使わない世代だが、今後を考えると、若い世代のファンを増やさなければならない。若い世代を中心に高い人気を誇るiPhoneは、木村屋がアプローチしたいユーザー層にマッチしており、その端末を通じたクーポン配信は魅力的に映ったという。
木村屋は、この10月にホームページと通販サイトのリニューアルを控えており、「これからいろいろと新しいことをやっていこうとしているところ」(愛甲氏)。そんなタイミングでPassbookが登場したので、挑戦してみたのが今回の取り組みだった。
リツイートや転送で一気に広がるところが魅力――Gap
ファッションブランド大手のGapは、3店舗でPassbookのクーポンを使ったキャンペーンを展開。Gap渋谷とGapフラッグシップ原宿で先着350人にトートバッグを、Gapフラッグシップ銀座で先着350人にオリジナルグラスをプレゼントした。
クーポンはiPhone 5発売前日の20時から、Passbook用クーポンのポータルサイト「Passbank」を通じて配布を開始。翌日の昼には500枚を超えるクーポンがダウンロードされた。ギャップジャパンでデジタルマーケティング&CRMブランドクリエイティブのマネージャーを務める永田龍太郎氏は、この情報拡散力に魅力を感じたという。
Passbookのクーポンは、ダウンロード用のURLをクリックすると、ユニークなIDが振られたクーポンがiPhoneのpassbookアプリ内に自動で格納される。そのため、配布用のURLをキャンペーン情報とともにFacebookやTwitter、メールなどを通じて流した場合、その情報を気に入ったユーザーがリツイートや転送などでURLを広めると、一気にクーポンが拡散することになる。「リンクを踏めば勝手にクーポンが落ちてくる手軽さ、リツイートやメール添付によるクーポンの広がりは、われわれとしてはのどから手が出るほど欲しかった」(永田氏)
クーポンプロモーションでは、どれだけ多く配れるか、どれだけ多く事前にクチコミしてもらえるかが大事であり、クーポンのダウンロードリンクをSNSやメールに付けられるPassbookは情報の拡散にうってつけというわけだ。「興味を持ってもらえるネタを用意できれば、どんどん広がっていく。そこに期待している」(永田氏)
Gapは3年前からQRコードを利用したメンバーシップサービスを提供しており、100万人規模の会員を抱えている。会員がフィーチャーフォンやスマートフォン上でQRコードを表示し、店舗に用意されたバーコードリーダーにかざすと、購買情報に応じたクーポンや割引券などの特典が受けられるというものだ。永田氏は、今後はこのメンバーシップサービスと、Passbookをうまく組み合わせて活用していきたいと話す。
「今いるお客様とのつながりはメンバーシップサービスで強くして、Passbookは、新しいお客様と出会うために、また、Gapから離れていたお客様と再会するために使っていきたい」(永田氏)
プラットフォーム乱立時代のマーケティング手法とは
Gapは長年、NTTドコモが提供するプッシュ型の情報レコメンドサービス「iコンシェル」を使ったプロモーションを手がけており、情報配信手段として便利に活用してきたという。「GPS連動もできているし、自動でコンテンツの書き換えもできる。待受画面上のヒツジくんが情報をしゃべって知らせてくれるところまでできているなど、あの仕組みは素晴らしい」(永田氏)
しかし、NTTドコモはiPhoneを扱っていないため、同様のサービスをiPhone向けに展開できないところが悩みの種だった。顧客基盤を広げるための情報発信をiPhone向けにどう展開するかと悩んでいたところに登場したのがPassbookだったという。
スマートフォンの登場により、情報配信のためのサービスやプラットフォームが増え続増え続けている。こうした中、プラットフォームごとに最適なサービスを提供したり、同じコンテンツでもパッケージを変えて流したりすることが重要だと永田氏は話す。「そういった工夫をこらして、できるだけ多くの方々にお得な情報や楽しい体験を提供するのがわれわれの戦略。その中で新たなタッチポイントとして登場したPassbookには期待しています」(永田氏)
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