CTRとCVRだけでは広告主は満足しない:Maxifierインタビュー
ディスプレイ広告の運用指標に関して、広告出稿サイドと媒体サイドでは大きなギャップがある。媒体側が提供する指標はいまだにCTRとCVRがほとんど。しかし、それは広告主サイドが設定するマーケティング指標の要求を満たしているとは言えない。Maxifierの最高レベニュー責任者(CRO) デニス・カレラ氏とアジアパシフィック Managing Directorのシャオミン・シャオ氏に両者のギャップを埋める方法を聞いた。
Maxifierが提供するものは何ですか?
オンライン媒体と広告ネットワーク向けの広告キャンペーンの改善や在庫の最適化を実現するツール「ADMAX」を提供しています。媒体社のアドサーバに「ADMAX」をAPI接続させた上で配信ログのデータと掛け合わせます。すると、アドサーバ経由で配信されているあらゆる広告配信方法(保証型、非保証型、アドネットワークなど)の広告キャンペーンのゴールを達成するためにどのようなことが必要か、システム側で解析し、改善策を提案できるようになるという仕組みです。最適化する項目(変数)は、配信サーバで設定可能な項目(*)のほぼ全てです。また、アドタグ設定の必要がなく、ツールを使用できる点を評価いただいています。
(*)配信先(広告枠)、配信頻度、配信優先度、広告クリエイティブの最適化、スケジュール(曜日、時間帯)、地域/Webブラウザ/OSなどのターゲティングなど
そのツールを使うと広告主やマーケターに対してどのような利益がありますか?
「広告主側」で設定している複数の広告の数値目標の達成に貢献できる点です。ディスプレイ広告の取引では、「保証型キャンペーン/非保証型キャンペーン」などさまざまですが、広告パブリッシャー側の提供する主な指標はこの10年間、変わらずCTR(クリックスルーレート)とCVR(コンバージョンレート)です。
一方、広告主側は取得できる数値が大きく変化しています。出稿担当者は媒体社の広告枠をただ購入するのではなく、どのような効果があったのか明確にしなければなりません。そのようなニーズから現在は計測できる項目が急激に増えています。例えば、Viewable Impression(広告の50%が1秒以上表示されたかどうか分かる仕組み)のようなブランディングの指標、滞在時間などエンゲージメントの指標です。ディスプレイ広告を運用して取得できる指標に広告主と媒体社の間で大きなギャップがあります。
われわれのツール「ADMAX」では広告主が設定していて、媒体社が提供できていない新たな計測項目を媒体社側の手間なく、共有できます。また、広告主が持つ目標をどのようにマネジメントすれば達成できるかという提案をシステムがしてくれる仕組みを提供しています。今のところわれわれのツールでしか、このような価値は提供できません。
導入事例を教えていただけますか?
はい。イギリスのメディア Guardianが「ADMAX」を使い、ヴァージンアトランティックのキャンペーンを担当した事例をお話しします。ヴァージンアトランティック側の課題はサイトのエンゲージメントを高め、インタラクション率と滞在時間を向上させることでした。しかし、Guardianのディスプレイ広告キャンペーンはFlashで配信され、「ADMAX」なしで広告主に提供できる指標はCTRとCVRだけでした。ヴァージンアトランティックが設定している複数の広告の数値目標をGuardianに理解してもらい、広告効果を改善することを目的に「ADMAX」を導入いただきました。
「ADMAX」を使い、媒体社側のデータと広告主側のデータを掛け合わせ 、インタラクション率と滞在時間という2つの指標に対してどの部分の広告枠に配信されているのか、どういう在庫を提供するのが最適か分かるようになりました。結果、エンゲージメント、滞在時間共に大幅に改善しました。
ツールがなければ、媒体社がリアルタイムで広告主の目標の進捗を確認することはできませんし、目標達成のためにどうするべきか、数値に基づいて意志決定することもなかったでしょう。欧米の企業では広告主側がメディアを選定する際、「在庫最適化ツール」を導入しているか否かが選定の基準の1つになっています。広告主が考えている指標に対してのパフォーマンスを高くできるからです。当然ながら、全てのキャンペーンで最適化ツールを使った方が高いROIで広告を配信できるので、広告主は今までと同じ予算で、より高い効果を上げられます。媒体社も同じ配信数で、より高い効果を提供することが可能です。「ADMAX」にはフォーブス他多数の導入事例があります。顧客のニーズに対応するために、媒体社が何らかの広告管理ツールを導入することは将来的には避けられないでしょう。広告主にとっては、より効果的な媒体を選定できる時代が来ると考えています。
今後のMaxifierの展望について
われわれは日本の市場でディスプレイ広告がより成果を出し、なぜ効果を発揮できたかを分かるようにしたいのです。今まで、媒体社がアドネットワーク経由で広告を売る場合、仲介業者が多すぎてどこに何をいくら払っているか、というコスト面、なぜそこに配信されたかという技術面、共に不明でした。媒体社が持つアドサーバに「ADMAX」を接続すると、アドサーバの動きをシミュレーションし、 費用対効果やキャンペーンごとの在庫管理が明確になり、より高い広告効果を上げることができます 。
カオスマップというインフォグラフィックスが有名なように、日本のインターネット広告市場はまだまだ広告主、媒体社共にブラックボックス化された仕組みの中で作業を続けています。例えばSSP(サプライサイドプラットフォーム)などを使えば、広告の成果を上げることができるかもしれません。しかし、なぜ成果が出せたかまでは分からない。「ADMAX」なら媒体社が請け負う全てのキャンペーンをホワイトボックス化し、「なぜこのような結果が得られたか」というインサイトと共に提供できます。最終的には媒体社も広告主も、より満足できるオンラインマーケティングの環境が構築できると信じています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 第1回 進化するアドテクノロジー――「枠から人へ」の変化
アドテクノロジーは誰のために、どんな目的で生まれてきたのか――。モーションビートのチーフプロデューサー 堺真幸氏によるアドテクノロジーの基礎解説。第1回はアドテクノロジーの技術的進化を概観する。 - 第1回 アトリビューションマネジメントの最前線
アトリビューションマネジメントの意義とは「アクセス解析の延長」や「広告効果測定の延長」ではない。顧客そのものの理解を深めることにあるのだ。Fringe81の田中弦氏による連載コラム「田中弦のアドテクノロジーで吠える!」第1回。アトリビューションマネジメントの最前線ではいま、何が起こっているのか? - 2016年のRTB市場規模は2011年の16倍超へ――マイクロアド調べ
マイクロアドによると、RTB経由による国内のディスプレイ広告市場は、2016年で1000億円超に達する見通し。