アドビ、設立から20年 「“子どもだまし”と思われた技術を標準にしてきた」
アドビ日本法人が設立20周年を迎えた。ティーゲル社長は「新技術を顧客が求める前に提供することで成長してきた」と話し、新たな注力分野について説明した。
アドビ システムズは3月27日、設立20周年を契機に記者会見を開いた。クレイグ・ティーゲル社長は「AcrobatやCreative Suiteなどの新技術を、顧客がほしがる前に提供することで成長してきた」と話し、今後注力していく2つの事業分野について語った。
1つ目の注力分野は「デジタルメディア」。2012年前半に発売予定の「Adobe Creative Suite 6」などを通じ、「ユーザーが魅力的なコンテンツを作成し、それをスマートフォン、タブレット、PCなどさまざまなデバイスに対し、ソーシャルメディアを含むさまざまなチャネルで配信できるよう支援していく」(ティーゲル社長)としている。
さらに、2012年前半にスタート予定のクリエイター向けクラウドサービス「Adobe Creative Cloud」にも注力していく。同サービスは、Creative Suiteの全機能や、タブレット端末向け画像編集アプリ群「Touch Apps」などをSaaS型で提供するもの。これにより、ユーザーはアップデートを意識せず常に最新版の機能を使えるほか、他のユーザーとクラウド上でコンテンツを同期して共同作業したりできるようになるという。
会見には、NTTドコモのテレビCM「touch wood『森の木琴』」などを手掛ける映像作家の菱川勢一さんが登場。動画編集ソフト「Adobe After Effects」などを使ってコンテンツを制作しているという菱川さんは「一人のクリエイターとしては、バージョンアップや他の人とのファイルの交換などにわずらわしさを感じる」と話し、Adobe Creative Cloudへの期待を語った。
2つ目の注力分野は「デジタルマーケティング」。Webコンテンツ管理ツールやアクセス解析ツールなどの提供を通じ、企業がデータに基づき顧客一人ひとりに最適化した効果的なコンテンツ配信を行えるよう支援していくという。
同分野の注力製品として、先週発表したばかりのWebエクスペリエンス管理ソフト「CQ 5.5」のデモも行われた。これは、Webサイトへのアクセスデータに基づき顧客の属性を想定し、自動で最適なコンテンツを表示するというソフト。例えばスポーツ用品のECサイトであれば、女性向け商品をよくクリックするユーザーに対しては女性向けのサイト表示に自動で切り替える――といったことが可能になるという。また、ユーザーの居住地域別にコンテンツや表示言語を切り替えることもできる。
アクセス解析ツールの米Omniture、コンテンツ管理ツールを手掛けるスイスのDay Software、キャンペーン管理ツールの米Efficient Frontierの買収によって「デジタルマーケティング製品の普及へのストーリーが強固にできた」とティーゲル社長。「Acrobatの提供を始めた当時、PDFは子どもだましのギミックのようなものだと思われていたが、いまや標準技術になった」「米Macromediaの買収によってCreative Suiteを展開し、市場の標準にしてきた」と話し、デジタルマーケティング分野でも業界標準を目指すとした。
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