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メールマガジンは本当に必要なのかWebマーケティングを営業力に(1/2 ページ)

法人営業のメールマーケティングで成功している企業は、私信メールとメールマガジンのバランスが実にうまい。今抱えている自社の課題に突き刺さるメールの使い方こそが、成功の可否を分けるのだ。

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 メールマーケティングにおける「私信メール」と「メールマガジン(以下、メルマガ)」のバランスについて、わたしが法人営業でコンサルティングを手掛けた企業の事例を紹介したい。営業の課題によって3つのパターンがあるが、どの事例にも個人そして組織としての営業力を上げるヒントが詰まっているはずだ。

営業課題1:営業リスト不足――システムを使わずにメルマガ配信

 企業Aでは法人向けメルマガの配信を検討していた。複数の企業から提案を受け、お眼鏡にかなうメール配信システムが見つかった。

 そこで、営業担当に声をかけ営業リストをかき集めた。ところが、名刺情報や展示会において、2年以内にコンタクトを取った「生きたリスト」は2000件弱しかなかった。メール配信システムの多くはB2C用の価格設定になっており、最低の配信数は5000〜1万件である。2000件では最低ラインの配信数に満たないため、当然コストにもムダが生じる。

 当時A社には10人の営業担当者がいた。メール配信システムにこだわらずに考えれば、営業10人で2000件のメールを送るには、1人当たり200件程度を担当すればいい。1人が1日当たり3通のメールを送れば、月間60通(平日を20日として)の私信メールを送信することになる。

 これを3カ月間地道に続ければ、1人で180件、10人で1800件のクライアントに対して、個々の事情に合わせた私信メールを配信できる。これはメールシステムを使わずに、年4回メルマガを配信することに相当する規模である。そこで、社はメール配信システムをあきらめ、営業担当者が私信でメールを送ることにした。結果、システムのコストがかからなかった上、50%以上のクリック率を獲得できた。

 A社の例からは「システムの導入が必ずしも正しいわけではない」ということが分かる。メール配信システムを導入する前に、落ち着いて現状を分析してみてほしい。新商品やセミナーの情報を出す頻度が年4回程度であれば、たとえ2000のクライアントがいたとしても、メルマガではなく個々の担当者の私信メールで情報を伝えられるのだ。

 メルマガと私信メールのどちらを選ぶかで迷った場合は、「営業リストと営業メンバーの割り算」をしてみるとよい。1人当たりが配信できるメールの数が現実的に対応できる数であるかどうか、これが1つの境界線になる。メール配信システムを使った配信の効率化を考えるのは、私信メールで効果を出し、個々の担当者ではフォローできないくらいのリストが集まってからでいい。それが賢明なマーケティング手法といえるだろう。

営業課題2:営業リスト余り――対象を絞り込んだ私信メール

 物流業界の大手企業B社では、特定の業界・職種に特化したリストの獲得を目指していた。ニーズが限られた商材であるため、Webサイトを使った幅広い集客は向いていない。そこで、業界に特化した調査を実施して同業界の人しか関心を持たないコンテンツを作り、メールアドレスと社名と氏名を入力するとそのコンテンツをダウンロードできる仕組みを作った。

 この業界特化型の調査を業界紙が取り上げた結果、B社には300件を超える営業リストが集まった。企業名から企業規模を推測し、営業候補の優先順位付けに役立てることができた。

 だが、B社の営業担当者は2人、しかも専業ではない。そこで300件の営業リストから企業規模が大きい本気で営業する50社を絞り込み、1人25通、1カ月かけて私信でメールを配信した。

 私信メールの内容は「大企業に絞り込んだリサーチ情報」や「未公開の調査結果」を見せたいので、アポイントをしたいというもの。個人情報を入れてまでコンテンツをダウンロードする顧客であるから、当然調査の続きへの関心も高い。この方法にしたことで、展示会出展をしたときの3倍以上のアポイント率を記録し、名刺の獲得にもつながっていった。直近の商談は決して多くはなかったが、いつでも次のコンタクトがを取ることができる体制が整った。

 B社の例は「すべての顧客に私信メールを送ればよいのではない」ことを教えてくれる。個々の営業担当者による私信メールで特化した名刺獲得を目指し、名刺交換後、本気の営業をすぐに始められる仕組みを作ったのだ。

 名刺交換という接点は、メルマガと私信メールを使い分けるポイントとして分かりやすい。名刺を交換する前はメルマガを使い、そこで得られたリードから有力候補を絞り、私信メールで名刺獲得を目指す。獲得後は営業支援システム(SFA)により、営業管理を行うこともある。

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