誰のためのBI? 本当の「アナリティクスの民主化」って? マイクロストラテジー・ジャパン社長に聞く合従連衡のBI戦国時代に専業ベンダーが生きる道(1/2 ページ)

「エンタープライズBI+セルフサービスBI」を掲げるMicroStrategy。同社日本法人社長に話を聞いた。

» 2019年10月17日 08時00分 公開
[冨永裕子ITmedia マーケティング]

 BI(ビジネスインテリジェンス)の領域においては昨今、大規模なM&Aが立て続けに報じられるなど業界再編が進む。この市場において、完全自社開発の製品提供にこだわり独立を堅持する一社がMicroStrategyである。超大企業を中心に全世界で4000社以上、100万人のビジネスユーザーが利用する同社の製品は「エンタープライズBI+セルフサービスBI」を体現しているという。日本法人であるマイクロストラテジー・ジャパン社長の印藤公洋氏に、その真意を聞いた。

印藤氏 マイクロストラテジー・ジャパンの印藤公洋氏

セルフサービスBIブームへの違和感

――GoogleがLookerを、SalesforceがTableau Softwareを買収することになるなど、BIの業界において再編が加速しているように見えます。そうした中でMicroStrategyは独立した立場を取り続けています。

印藤 BIに限らず、ソフトウェア会社は売り上げが2000億から3000億ドルの水準に達すると大手ベンダーの買収のターゲットになる傾向があります。この規模になると既に販路が確立していて、大手ベンダーとしてはさらに成長する機会が得られるからです。問題は買収がユーザー無視になりがちだということです。BI専業ベンダーとして生き残るため、私たちはお客さまの必要とする機能を考えることに集中してきました。

――御社の強みはどこにあるのか教えてください。

印藤 MicroStrategyの最大の強みはその製品に加えて導入を支援するプロフェッショナルサービスという2つの柱を持っていることです。競合から「あそこの製品はコンサルタントが入らないと動かない」といわれていることは知っていますが、それでも構いません。ダッシュボードの設計からパフォーマンスチューニングに至るまで、大企業へのBIツールの導入には、何より幅広い知識と経験が不可欠です。実は日本法人の社員構成は営業や製品のプリセールスSEよりも導入コンサルタントの方が多いのですが、そのぐらいコンサルタントの役割は重要なのです。

――現在のBIツールのトレンドといえば「セルフサービスBI」ですが、MicroStrategyはどう対応しているのでしょうか。

印藤 企業における意思決定には、本社の企画部門が行うような戦略的なものだけでなく、日常のオペレーショナルなものもあります。一般的なセルフサービスBIは、戦略的意思決定を行う数人のパワーユーザーのサポートには適していますが、オペレーショナルな意思決定を行うビジネスユーザー向けではありません。BIとは数人のパワーユーザーの彼らだけのものではないのです。よく「データドリブン経営」といわれますが、大企業ではデータから得られた示唆を得て自身の業務を遂行する「インフォメーションコンシューマー」が99%のはずです。この99%はデータを見るだけで、自分でデータを操作することはまずありません。私たちの製品戦略はこの99%に焦点を当てたものです。

――インフォメーションコンシューマーのためのBIには何が求められるのでしょう。

印藤 1つはリアルタイム性。午前の売り上げが午後には確認できるようになっているべきです。同時に1万人がダッシュボードを見てもダウンしないスケーラビリティも重要です。それと権限管理。営業が人事のデータを気軽に見られるようではいけない。このように、「エンタープライズBI」特有の技術要件を満たす必要があります。この他にも、社外のモバイル環境からデータにアクセスしたいというニーズに応えるなど、さまざまな要件が出てきます。コンサルタントなしでこれらに応える導入を行えるでしょうか。

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