サブスクリプションが解 初代バチェラーが語る、顧客との継続的な関係を築くブランディングとモノ作りCRMの限界を超える(1/2 ページ)

初代バチェラーとして知られる久保裕丈氏は現在、家具のサブスクリプション型レンタルサービスを手掛ける。顧客と継続的な関係を築くためにブランディングはどうあるべきか、久保氏がさわやかに語った。

» 2019年03月18日 08時00分 公開
[やまもとはるみITmedia マーケティング]

 ユーザーの求めるものはますます高度化し、課題も目まぐるしく変化する。彼らを顧客としてつなぎとめるため、企業は何をしなければならないのか。2019年3月1日にトライベック・ストラテジーが開催した「T-CONFERENCE」におけるクラス代表取締役の久保裕丈氏が行った基調講演から、そのヒントを探る。

クラス代表取締役の久保裕丈氏

初代バチェラーが持つ経営者としての顔

 「バチェラー・ジャパン」は米国のテレビ局であるABCで2002年から続く恋愛リアリティー番組「The Bachelor」の日本版で、Amazon.co.jpの動画配信サービス「Amazonプライム・ビデオ」のオリジナルコンテンツとして配信されている。2017年に初代バチェラーの大役を務めたのが久保氏だ。

 容姿端麗で高学歴、高収入の独身男性を多数の女性たちが奪い合うという「婚活サバイバル」において、バチェラーは25人の女性たちとデートを重ねて順番にふるいにかけながら最終的に1人の女性をパートナーとして選ぶ。久保氏は、甘い笑顔と女性1人ずつへの細やかな心配りで見事にバチェラーの任を全うした。

 久保氏は東京大学大学院修士課程を修了してコンサルティング会社A.T. Kearneyで活躍した後、2012年に女性向け通販サイト「MUSE&Co.(ミューズコー)」を設立。2015年に事業を売却してからは、個人で数十社の企業顧問を担当し、Web関連のコンサルティングなど手掛けてきた。現在はベンチャー企業のクラスで個人および法人向けに家具のレンタルサービス「CLAS」を提供し、注目を集めている。

 CLASは長期利用を前提とした定額制のサブスクリプションモデルを採用しているところに特徴がある。

 家具は洋服などと異なり購入機会が少なく、選択眼が養われない。それでいて価格は高い。つまり、買ってみて失敗するリスクが高い。一方で、転職や結婚などで生活が一変すれば、その都度配送や組み立ての費用や手間がかかる。また、既存の家具が新しいライフスタイルに合わなくなり、せっかく買ったものを処分しなければならないこともある。廃棄にもコストがかかる。オフィス用家具でも事情は同じで、特にベンチャー企業などでは、成長途上に合わせて家具をリプレースするコストは総務担当者の大きな悩みになる。

 そこで、サブスクリプションモデルがメリットを発揮する。CLASで家具を調達することにより利用者はコストを抑え、例えば個人向けでは、ベッドや机と椅子など単身者の部屋に必要な家具一式を月4600円程度でそろえることができる。家具の組み立てや処分も無料。また、3年以上の契約では75%の割引価格を設定しており、利用期間によって割高になることもあり得るという定額制のデメリットを抑えている。

家具のサブスクリプションサービスを始めたきっかけ

 「ただ価格を下げたいわけではなく、ユーザーがペイン(痛み、課題)として抱えているものを解決したい。これがわれわれのブランドプロミスであり提供価値」と久保氏は語る。

 久保氏がCLASを始めるに至ったのは、そもそも自分自身がこのようなサービスを強く欲しいと思っていたからだ。引っ越しの度に必要な家具は変わる。家具が部屋に合わないと居心地が悪くなる。直近の引っ越しの際に、家具の輸入販売業を営むイノベート代表取締役の白河 衛氏に相談した際に、引っ越しのたびにいちいち家具を買い替えるのはもったいないという話になった。ここが原点だ。ちなみに白河氏は現在、クラスのCOOも務める。

 「バチェラー・ジャパン」への出演が、所有しない暮らし方への共感につながったという面もある。番組で久保氏は金持ちのイケメンキャラという設定なので、インタビューを受けると必ず、暮らしぶりについて質問された。どういう車に乗り、どういう家に住んでいるのか、家具は何を使っているのかといったことを、いやというほど聞かれた。もともとモノへの執着があまりない久保氏は、こういうことを聞かれ続ける中で、「所有から使用へ」というサブスクリプションの考え方に傾倒していった。

 商材として家具に目を付けたのは、MUSE&Co.でアパレル業界を経験し、プレーヤー数が多くユーザーのリテラシーが高い世界での競争に難しさを感じていたことが関係している。そして、家具という物理的な商材を扱いつつサブスクリプションモデルを選択したのは、これまでの経験から、既存のCRM(顧客関係管理)に限界を感じていたからだ。

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