ふくおかFGの挑戦、リアルタイムアナリティクス技術を活用したオムニチャネルマーケティングの実現へ「SAS FORUM JAPAN 2018」レポート(1/2 ページ)

オムニチャネルによる顧客経験価値の向上を重点項目に位置付け、先進的な取り組みを進める、ふくおかフィナンシャルグループの挑戦を紹介する。

» 2018年06月06日 16時00分 公開
[冨永裕子ITmedia マーケティング]

 ふくおかフィナンシャルグループ(以下、ふくおかFG)は、福岡市を本拠地とする地域金融グループの持株会社だ。九州全域を地盤とする福岡銀行、熊本県を地盤とする熊本銀行、長崎県を地盤とする親和銀行の3行を傘下に持つ。3行はそれぞれ独立したブランドを維持しつつ、システムインフラや経営体制を一体化する「マルチブランド・シングルプラットフォーム」を掲げるところに特徴がある。

 マーケティングもまた、持株会社側で3行分の業務を包括的に行っている。全ての顧客チャネルで収集されるデータを統合・分析し、チャネルとマーケティングシステムをリアルタイムかつ有機的に接続するオムニチャネル環境の構築により、顧客経験価値の向上をグループ全体で目指しているのだ。

 本稿では、2018年5月にSAS Institute Japan(以下、SAS)が開催した「SAS FORUM JAPAN 2018」において、ふくおかFG営業推進部主任調査役の須永真昼氏と同副調査役の坂本勝也氏が行った講演から、同グループがSASのリアルタイムアナリティクス技術を活用したオムニチャネルマーケティング環境を構築して得られた成果を紹介する。

銀行のオムニチャネルは、かなり幅が広い

 ふくおかFGでは「第5次中期経営計画」(2016年4月〜)に基づき、「広域経済圏をカバーする安定的な金融システムの構築」「地域経済の発展・活性化への取り組み」という2つの長期戦略を進めている。取り組みの中にはマーケティングの高度化やオムニチャネル化も含まれる。

 オムニチャネル化において、ふくおかFGが重視したのは「顧客を知る」「顧客へ提案する」「現場が活用する」の3つだ。

 顧客ニーズを理解していれば、銀行が売りたいものではなく、顧客が今欲しいものを適切なチャネルから提案できる。そのための大前提となるのが、より多くのデータを収集し、分析することだ。窓口の担当者やコールセンターのオペレーターが顧客と接するとき、相手がこれまでどういう取引をしてきたかをあらかじめ正確に理解していなければならないからだ。

 しかし、顧客のあらゆる行動を一元的に把握するのは、容易ではない。銀行のオムニチャネルは、顧客視点で考えると非常に広範囲にわたるからだ。ふくおかFGでは「デジタルかリアルか」「無人か有人か」の2軸だけでなく、次のような視点でも整理している。

  • ロケーション:店舗、無人コーナー、自宅、会社、外出先、コンビニ
  • デバイス:銀行員との対面もあれば、ATM、電話、PC、スマートフォン。取引はできないがサイネージも顧客接点
  • アプリケーション:昔ながらの「紙+印鑑」から通帳、キャッシュカード、インターネットバンキング、メール、モバイルアプリまで。最近ではAPI連携でつながる家計簿アプリケーションのような外部サービスもある
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