“Webマーケティング”はなぜ終わるのか?【連載】コンテクストマーケティング序論 第1回(2/2 ページ)

» 2016年10月12日 07時00分 公開
[原水真一サイトコア]
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情報の流れが変わった

 Webサイトが利用されるシチュエーションは時代とともに変わりつつも、その運用において最も重視されるのはコンテンツの品質であり、それは変わることはありません。ただ、多くの企業が多くの情報を提供し始めることにより、ユーザーがWebサイトだけで全ての情報を知ることは難しくなりました。

 多くのユーザーは実際に興味を持ったWebサイトでニュースレターなどのサービスを利用することで、効率よく情報を得るのが一般的となっています。また、最近ではソーシャルやスマートフォンのアプリなど、Webサイト以外のサービスを活用するシーンも増えています。企業からの情報を効率よく得ることができるようになり、ソーシャルメディアを利用して直接情報交換をすることさえも可能になってきています。

 このため、業種によってはWebサイトだけでなくTwitterの公式アカウントやFacebookページの運用も必要となってきました。もちろん、古くからある電子メールを主体としたニュースレターの購読なども引き続きニーズがあります。Webサイトのアクセス解析だけに頼っているようでは、自社のコンテンツにリーチするユーザーの傾向を正しく見ることが難しくなっているのです。

デジタルマーケティング実践に求められるもの

 企業が変化に対応しつつビジネスを伸ばすためには、こうしたさまざまなチャネルを通じたデジタルマーケティング、オムニチャネルの実践が求めらます。もはや旧来の“Webマーケティング”では太刀打ちできないのです。

 Webサイトの運営にCMS(コンテンツ管理システム)を導入し、アクセス解析ツールとの連携やフォームの配置という取り組みを進めてきた企業も多いと思いますが、これらだけでは既に旧世代の基盤と言わざるを得ません。

 Webサイトを中心としたアプローチであればページビュー(PV)やユニークユーザー(UU)など、アクセス解析ツールから得られる統計データを基にサイト内を最適化していればよかったわけですが、もはやWebサイト訪問者を増やしてビジネスを伸ばすだけでは競業他社との差別化を実現することは不可能です。

 現在では、ユーザーが参照したページの訪問履歴やWebサイトにおけるコンバージョン、トリガーメールの送信およびそのレスポンスなどのデータを活用して、ユーザープロファイルを作ることができるようになっています。

 また、プロファイル情報を活用してユーザーごとに最適な情報を提供するようパーソナライズするなど、Webサイトに求められる機能は増えてきています。

 これらをさまざまなツールを組み合わせて実現しようとしている企業もあります。しかし、そうした場合、それぞれのツールを活用するのがゴールになってしまいがちで、本来のコンテンツの強化まで手が回っていないという話をよく聞きます。

 マーケティングを実践する上では、最適なコンテンツを最適なタイミングで最適な人に提供をし、最大限の効果を引き出すためのツール選択が必要です。

競技の数だけブランドサイトが乱立

 ここで、使いやすいコンテンツ管理システムの導入により効率化を達成したスポーツ用品メーカーのミズノの事例を紹介します。

 ミズノは創業以来、スポーツ用品の開発にとどまらず、大小さまざまな規模でスポーツ振興に力を注いできた企業です。さらに、生産拠点としても販売拠点としても積極的に海外展開を進め、活動領域を拡大させています。

 そんな同社ならではの悩みが、Webサイトの運営でした。競技種目ごとに数十ものブランドサイトが乱立し、店舗やECサイトへの送客を目的とするという点を除いては、それぞれターゲットもデザインもコンテンツも運営体制もバラバラでした。各部門の担当者がそれぞれの制作会社とともに、好きなタイミングに好きなコンテンツを上げているだけ。もちろん、各サイトが保有するデータもバラバラでしたから、パーソナライズどころではありません。

 そこで同社は、統一的なCMSを使って効率よくコンテンツを制作し、本業により多くのリソースを投入できる環境を整えるためにリニューアルを決断しました。

 2014年7月から1年以上かけて新サイトへの移行を実現し、「mizuno.jp」の1つ下の階層に各種目のフォルダを作りました。それぞれの担当者は権限を付与されたフォルダだけを運用するようになりましたが、プラットフォームが統一されたことで、他部署のやっていることが把握しやすくなったといいます。

 また、Webガバナンスも強化され、テンプレートの活用や内製化も進みました。具体的には、Web サイト運用外注費を約50%削減することにも成功しています。

 効果はそれだけではありません。統一感があって使いやすいWebサイトに変わったことで、製品情報ページへのコンバージョン率がリニューアル前に比べて約105%になるなど、ユーザーの反応にも効果が見えているようなのです。

CMSツールによってテンプレートを統一して制作の効率化を図る。Webサイトに統一感が生まれれば、ユーザーの使い勝手も向上し、結果的に収益にもつながる。

 肥大化するWebサイト運営を効率化し、散在するデータを統合してユーザーに最適なコンテンツを届ける。ビジネスに貢献するWebサイトを目指すのであれば、それを可能にするためのツールが必要になります。次回は、そのツールの選択に関して、もう少し深堀していきます。

執筆者紹介

原水真一

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サイトコア セールスグループ プリセールスマネージャー。2000年1月にマイクロソフトに入社、Microsoft.com/japan の担当を7年、Microsoft MVP Program のプログラムマネージャーなどを担当。2010年7月からデジタルマーケティングプラットフォームのパッケージを提供しているサイトコアに入社、営業、マーケティング支援、プリセールス、パートナープログラムなどの業務を担当。2015年10月〜2016年3月まではFIXERでマーケティングなどを担当したのち、2016年4月にサイトコアに復帰。プリセールスを中心としつつ、日本でのビジネスをより大きくするために、さまざまな業務を担当しています。


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